2025.12.10

Project Story

Project Story 07|
堂島関電ビル
リニューアルプロジェクト

2025年6月に大規模リニューアル工事が完了した堂島関電ビルは、幾年にも亘る模索に探究を重ねた、壮大なプロジェクトでした。長年に亘ってご入居頂いている積水化学工業さまをはじめ、施工に携わって頂いた大林組さま、内装にご尽力を頂いたスペースさま、そして弊社が力を結集して、さまざまな難局を乗り越えながら、53年が経過した築古オフィスビルをESGやSDGsに配慮し、最新のビルへ生まれ変わらせた本計画について、関係各社の担当者さまよりお話を伺い、Think!Office Project Storyとして発信いたします。

プロジェクトメンバー

  • 積水化学工業(株)
  • 久永 祐樹さま
  • (株)大林組
  • 三谷 勝章さま
  • (株)スペース
  • 川端 監弥さま
  • 関電不動産開発(株)
  • 今井 秀明
  • 関電不動産開発(株)
  • 井口 良
  • 関電不動産開発(株)
  • 尾崎 伸吾
  • 関電不動産開発(株)
  • 石原 毅人
  • 関電不動産開発(株)
  • 岡田 麗

半世紀の歴史を未来へ繋ぐため、
快適で持続可能なオフィスへと再生するべく
プロジェクトは始動

リニューアルのきっかけとなる、積水化学工業さまからのご要望

久永

2020年10月、私が法務部総務グループに異動しビル管理業務に従事、移転検討も含め本社ビルのリニューアルプロジェクトを立ち上げたことがきっかけです。当社が本社ビルとして利用している堂島関電ビルは築50年が経過。設備・外観ともに古く、従業員からの改善要望も山積していたので、ビルを管理する総務グループの責任として、私が移転を提案しました。
ただ、社内からの声に耳を傾けると、積水化学は50年以上この場所に存在している意義、プレゼンスがあるのでここの維持も検討してほしいという要望があり、検討の結果、リニューアルで話を進めることにしたのです。
リニューアルに際しての要望は、大前提としては従業員が、新しいビルに移るよりこのビルに残ってよかったと思える新築レベルの仕様。既存環境に不満を抱える従業員も納得できる劇的な変化が大きなポイントでした。

プロジェクトは、どのように展開されたのでしょうか。

今井

関電不動産開発としても、約10年前、築40年が経過した頃から、リニューアルは検討していました。
これだけのビルの全面改修は初めての試みでしたので、まずはメニューを出すところから始めました。それがちょうどリニューアルが決まった2021年の夏ぐらい。
古く感じる外装をどこまで改修するかという話も出ており、大林組さまも交えて議論を進めていました。
屋内についても、できること、できないことの協議を積水化学工業さまやスペースさまを交え、一つひとつ検討しました。当初の工事区分協議は、侃々諤々だったイメージがあります。

三谷

積水化学工業さまのイメージを表現し、現代のビルと同性能にするという要望に、どう応えるかはかなり考えました。
ビルの性能を上げるため、熱負荷を抑制するガラスを採用し、特徴的なルーバー部分も熱・採光解析シミュレーションを行い、効果的な角度や位置を検討し、設置しています。

久永

オフィスビルでは、オーナー側で仕様を決め、できることはここまで、と線引きをするのが通常だと思います。今回、長い付き合いがあり、当社の要望も取り入れながらリニューアルを進めてくれたことに感謝しています。

お客さまに徹底的に寄り添った
リニューアル

リニューアルのポイントや、特にこだわった部分を教えてください。

三谷

外観ではやはり、積水化学工業さまの社名の由来でもある、「満々とたたえた積水」を表現するルーバーがポイントです。
この場所は、中之島や堂島川に面した歴史ある場所。積水化学工業さまの思いも踏まえ、やはり水都大阪の都市景観にも貢献できる外観にしたいという思いがありました。

川端

内装では、これまでカンパニーごとやグループ会社ごとで仕切られていた壁を取り払い、社員の方の働く場所の選択肢を増やすことで、さまざまな場所での交流や、新しい発想が生まれるように考えています。
また、今回CASBEEウェルネスオフィス評価認証を取得していますが、天井を抜いて開放感を演出、グリーンを多く取り入れるなど、要件を満たす工夫を随所に取り入れています。

今井

新築ビルであれば、オーナーである我々の考えや思いを表現して建設を進めていきます。その上で気に入ったお客さまに入居いただけるという流れ。今回はとくに、長年ご愛顧頂いているお客さまだからこそ最適化した提案となるよう工夫を凝らしました。例えば、ビルのアクセントカラーには積水化学工業さまのコーポレートカラーを採用。
従業員の皆さまに「自分の会社のビルなんだ」と愛着を持ってもらいたかった。ビルオーナーである我々にとって、入居者さまに徹底的に向き合った今回のプロジェクトは学びが多く、大きな意味があったと感じています。

工期中の細かな調整事項や
新たな課題への対応

プロジェクトを遂行するにあたり苦労したのはどんなところでしょうか?

久永

関係者間の調整は言わずもがなですが、“執務を継続しながら”のリニューアルです。工事の工程上、上階から順に進める必要があったので、まず2階の会議室を仮住まいの執務エリアに変え、11、10、9、8階の従業員を2階と別のビルに分散させて1期目の工事を実施。完成したら引き戻り、次は7、6階というように進めていきました。引っ越しの計画も緻密に立てて行いましたが、この調整は本当に大変でした。
今回、引っ越し先も関電不動産開発さんに手配いただき、いちテナントという枠を超えた柔軟な対応に感謝しています。

三谷

上の階を工事しているときも下の階には従業員の皆さまが執務中なので、騒音などの影響はかなり考えて動きました。また近隣への配慮も充分に必要だったので、かなり慎重に進めましたが、想定以上に影響が大きく、急遽、施工方法から見直したこともありました。

久永

関係者が多い分、工事期間や内容のすり合わせ、コスト面の調整など苦労は大いにありましたが、このように突然降って湧いた課題にも、全員が何とかしようと一丸となって団結し協力してくれたのは、このプロジェクトの一番の持ち味だったと思っています。

それぞれの立場・役割で得た、
学びや経験、そして与えたもの

プロジェクトを通して、どのような経験が得られたとお考えですか。

井口

今回、実際に使用される積水化学工業さまの声を聞いていると、私たちも、お客さまの使い方を意識しながらオフィスビルを作り込んで提供していくことが大切だと改めて実感しました。今回のプロジェクトを通して、この意識を持てたことは非常に大きいと感じています。

今井

このプロジェクトでは、若手の経験が当社のテーマとしてありました。全面リニューアルでビルを丸裸にしましたが、50年前の建物は精度も技術も現代とは違うし、バラしてみると図面通りじゃないところも多々あるのは、驚きだったと思います。実際に動いてからの設計変更など、難しいことも経験できたし、それを次に活かしてほしいと思っています。

岡田

設備面を担当しましたが、築年数、規模、改修期間、また社外の皆さまとの協業など、どれをとっても私自身の初めての体験で、すごく勉強になりました。
今後も築古物件や、大規模物件の改修に関わることがあれば、今回得た学びを活かしたいと思っています。

石原

私も設備部門で本プロジェクトに携わりました。既存の建物の中では、なかなかの手強い物件で、すでに機能維持のために改修されている部分もあり、リニューアルメニューに含む必要のあるものとないものを見極めるための現地調査を実施するなど、苦労することも多かったです。
今回のような大規模なプロジェクトを担当できる機会もあまりないと思いますし、とても貴重な経験になりました。やってみろと任せて支えてくれたチームのお陰だと思っています。

尾崎

私は建築部門を担当しました。実は私は10年ほど前に、このビルを建て替えるか、リニューアルするかのせめぎ合いの際に携わっており、その後、会社の組織改正の兼ね合いで一度担当業務から外れました。
2022年から再びそのプロジェクトに携わることになり、すごく“縁”を感じますし、10年前の過去の自分・出来事を振り返ると、竣工した今、感慨深いものがあります。

三谷

関電不動産開発さまのなかでは世代間の継承、積水化学工業さまでは久永さまをはじめ、皆さまがもう一度この場所で働く意義など、建物が生まれ変わる時のバトンタッチに関われたという印象です。その意味で、未来を創るということはどういうことなのかを非常に考えたプロジェクトでした。

川端

未来に続くビルを目指すために、関係者全員が、目標に向かって方向性を合わせることが、プロジェクトの一番大事なところでした。僕らは内装部分の担当でしたが、皆さんが一つになっていくところをサポートしながら、一緒に歩めたことが大きな経験になったと思っています。

堂島関電ビルリニューアルは
新たなチャレンジの成功

最後に、関電不動産開発に一言お願いいたします。

三谷

ビルは完成しましたが、これで終わりではなく、今後このビルを育てていくにあたり、維持管理も含めて長いフェーズで一緒に歩んでいきたいとも思っています。いつまでも、お互いに学び合える関係であり続けたいですね。

川端

今回は、「築50年のビルを100年活用しよう」というキャッチコピーに向けた、一つのチャレンジ案件の成功だと思っていますし、そこに携われて、僕たちもすごく良かったと思っています。

久永

大変なことは、皆さんそれぞれの立場で語りきれないくらいあり、その中でも無事に完成したのは、やはり全員の努力があったからだと思います。関電不動産開発さまも、大林組さまもスペースさまも、本当によくやってくれたと思っています。

EDITOR’S NOTE

物件の背景に、どれだけのストーリーがあるのか。このことを物語っているヘリテージと言っても過言ではないビルと自負しています。多大なるご尽力を頂いた関係各社さま、そして関わり導いて下さった方々、本当にありがとうございました。
ひとつひとつのお客さまに寄り添う、が基本の形だと思って信じてビル事業を展開しております。
様々な方に、寄り添い親しんで頂ける建物となるよう、心を込めて。

築50年を経過する堂島関電ビルを
積水化学工業と関電不動産開発の共同で「ESG×SDGs」に配慮し
オフィス価値を高める大規模リニューアルにチャレンジ

堂島川を挟んだまちなみ

工事着手前
2024年6月時点

堂島関電ビル内部をご紹介