建物外観
2024.06.17
Project Story
Project Story01|
関電不動産渋谷ビル <前編>
ご挨拶
これから当社が世に送り出すビルについて、その裏側にある物語をこれからProject Storyとして展開してまいります。当社の持つ物件の持ち味や開発にかける私たちの“想い”を知っていただけるきっかけになりますように。
ひとつのビルを生み出すにもドラマがある
単なる商品として、作って貸して売ってというものだけではなく、まわりの協力者・近隣関係者すべての方々と関わりあい、英知を集めて生み出したオフィスビル。これからどんなパートナーを得て、どう育てていきたいか?そんな目線でモノづくりに携わった当社メンバーの想いとともにプロダクトをご紹介してまいります。
そもそも、Think!OFFICEって?
当社がオフィスづくりに掲げるコンセプト“DELIGHT(ワークスタイルに輝きと喜びを)”のキーワードに込められた思いを伝える媒体のひとつ。「オフィスで働く人の活力と創造性、きらきら輝きながら働き、過ごす時間を最大限に引き出したい。それが出来るオフィスとは、何か」を常に探求していくことをミッションとして、Think!OFFICEは始まりました。
01.
Project|関電不動産渋谷ビル(2024年2月竣工)
場所は4社8路線が乗り入れるターミナル渋谷駅新南口から徒歩3分。恵比寿・代官山方面へも歩いていけ、再開発でさらに魅力を増す渋谷三丁目エリアに、2024年2月「関電不動産渋谷ビル」を竣工しました。ビルの開発を中心となって推し進めてきたプロジェクトメンバーがこちらの3人です。
首都圏事業本部
ビル事業部
建築技術グループ
リーダー
鈴木浩太郎
首都圏事業本部
ビル事業部
建築技術グループ
リーダー
金子千穂(育休中)
首都圏事業本部
ビル事業部
事業推進第一グループ
リーダー
西川麻花
02.
Concept|OUR PLACE. OUR STORY.
―― 今回の開発において、「渋谷」というエリアについてどんなことを意識しましたか?
西川 これまで弊社では京橋や八重洲といったいわゆるオフィス街を中心に開発を手がけてきましたが、23区西側エリアでの開発は今回が初めて。“多様性を受け入れ個性を尊重する渋谷”という街でのビル開発は、弊社にとっても一つの挑戦でした。
プレゼンテーションの様子
プレゼンテーション資料
鈴木 そこで私たちは、渋谷という街がどんなところか知ることからはじめたんです。どんな建物や企業があるのか、これから先はどんなオフィスが流行っていくのか。設計・施工に携わっていただいた竹中工務店の若いメンバーと協業しワークショップを実施、渋谷のいろんなオフィスに足を運んで実際にワーカーさんたちにヒアリングしたりして、渋谷の街や最新のオフィス事情について知見を深めながらプロジェクトを進めていきました。
その結果わかったのは、渋谷には「オフィスで自分たちのプレゼンスをアピールしたい」「ブランディングしていきたい」というマインドを強く持った企業が集まっているということ。実際、渋谷にはGoogleやMIXI などの特徴的なオフィスづくりをしているIT企業やベンチャー企業が集積していて、ヒアリングした企業の多くが渋谷でなければダメだとおっしゃっていたのが印象的ですね。
西川 それがなぜかというと、渋谷に拠点を構えるIT企業同士のつながりが強くて、業務がしやすいのだそうです。キャリアアップのための転職が多いエンジニアの方々も、渋谷の中で会社を移り変わってステップアップしていくケースがよくあるとか。人材の確保をはじめとしてメリットが多いため、企業としてもオフィスを移転する際は、絶対に渋谷内でしたいという声をよく聞きました。
企業ステータスの確立や事業創造、リクルートの強化、従業員満足度の向上など、渋谷の企業が解決したい課題を、どうやってこのビルに落とし込んでいくか。半年かけて議論を重ねて辿り着いたのが『入居企業が育てる「らしさ」あふれる空間』というコアバリューです。そこから最終的に、このビルを自分たちの場所であると思ってもらい、この場所からどんどん物語をつくっていってほしいという願いを込めて、「OUR PLACE. OUR STORY.」というプロモーションコンセプトが生まれたんです。この言葉は私たち作り手側の行動指針にもなっています。
―― 二人は渋谷に対してどんなイメージを持っていますか?
鈴木 本当に面白い街だと思います。衣・食・住が近接していて、雑多なところからハイソなところまで混在している点に、大きな可能性があるのではと感じました。ワーカーの方が短パンをはいて歩いているのを見たりすると、私の勤務地である八重洲とのギャップに驚きながらも、これもこれからの時代の姿かもしれないとも思います。そんなところがすごく新鮮ですね。
西川 私もその面白さは実感しています。街全体に個性や多様性があふれていて、なんでも受け入れてくれる懐の深さがあるので、こちらとしてもいろんなことにチャレンジしやすいのが魅力。また、渋谷の特徴の一つとして、街に出ればマーケティングができると言われるくらい多種多様な人がいますし、同じ渋谷でも繁華街のある道玄坂と関電不動産渋谷ビルのある渋谷三丁目エリアはまた違った雰囲気があります。渋谷三丁目は渋谷の中でもカラーがまだ薄く、企業のブランドづくりもしやすいと思うので、そこに私たちの関電不動産渋谷ビルも貢献していきたいですね。
03.
Marketing|「働く人のリアル」をカタチに
エントランス
―― 渋谷のワーカーたちの声はどんなところに反映されていますか?
鈴木 たとえば、木調のパネルが壁から天井へつながり、外部のピロティまで伸びたエントランスのデザインは、太古の昔、渋谷の地が原生林だったことから大樹の成長をイメージしています。みなさまと一緒に成長していきたいという想いを込めてデザインしているのですが、このデザインについては実際に渋谷で働かれているワーカーさんにヒアリングして、3案あるデザインの中から一番渋谷らしいのものを採用しました。
直接声を聞くというのは初めての取り組みでしたが、これがエビデンスとなって自信をもって進めることができましたし、渋谷のワーカーさんは一人一人がデザインに対する感度が高いということがわかったのも一つの発見でしたね。
西川 そのほかには、ヒアリングをもとに女性トイレの個室の数を3つから4つに増やしました。営業先でお話を聞いていると、渋谷のワーカーさんは女性比率が他のエリアより多いそうで、元々計画していた個室の数では少ないというご意見を多数いただいたんです。建築技術グループと議論し、再設計にかなりお骨折りいただきました。
鈴木 なかなかシビれましたね(笑)。ブース面積が1つ分増えるのですが、トイレの面積は決まっているので、どうやりくりするか…。難題でしたが、どうすればお客さまが喜んでくれるのかということを一番に考えながら、試行錯誤してプランを進めていきました。
また、女性トイレでは当たり前についているパウダーカウンターも形状を改めて見直し、鏡の位置や角度までこだわりをもってつくっています。実際に模型をつくり、「鏡の角はとった方が女性らしいね」「ちょっとアールにしてみよう」とか、毎週遅くまで作業していました。
西川 小物を収納できるプライベートボックスやジェンダーを意識したトイレサインなど、細かいところにもこだわりがあって、このトイレを見た方からは「こんなキレイなトイレ見たことない」「ここまで配慮されているなんて」と、高い評価をいただいています。
トイレ
トイレ
〈5階〜10階 基準階平面図〉
鈴木 貸室も渋谷のオフィストレンドを調査して、実際にどんなレイアウトが喜ばれるのかを検証しました。今は従来のような島型レイアウトではなく、ソファーやリフレッシュスペース、キッチンなど、いろいろなアクティビティに合わせたゾーンを設ける企業が多く、特に渋谷はその傾向が強い。
その中で一番ハード的に難しいのが水回りです。排水の問題があるのでコア側にもってくる方が技術的には合理的なのですが、オフィスの内側はしっかりと執務するスペースにしたいと希望される企業が多いので、あえて効率を求めるのではなく、コスト的にも頑張って、水回り設置可能エリアをテラス付近に配置しました。オフィスに求められる価値がどんどん変わってきている中で、何が必要なのかを本当にゼロから追求したビルになっていると思います。
西川 今回のように生の声を聞くことは、自分たちにとっても新たな気づきを得られたいい機会でした。マーケットインしたプロダクトづくりができたと思うので、引き続きこういった手法での開発を進めていきたいですね。
―― 現在、育児休暇中のメンバーからもコメントを頂きました
金子 工事着工後に第一子出産のために産休に入り、子育てに追われながらも渋谷ビルの完成を見守っていました。社会人生活の中でも、特に思い入れのある物件です。
開発においては、プロジェクト推進中に新型コロナウイルスの影響で世の中の働き方が大きく変化したことを背景に、渋谷エリアの特性を踏まえたお客さま・ワーカーの多様な働き方を後押ししたいという想いを根底に持ち、求められるオフィスの価値から徹底的に見直しました。
個人的なミッションとして「大多数の満足を得るよりも、個々の不快を無くす」ということを掲げ、多くの企業さまやワーカーから吸い上げた前例にとらわれない真のニーズをプランやデザインに落とし込んできました。
この先も日々変化していくオフィスニーズを追い求め、使う人のリアルな声を吸い上げながらオフィスづくりに取り組んでいきたいと思います。
貸室
EDITOR’S NOTE
渋谷という大きな街の息づかいが感じられるオフィスづくりのため、さまざまなものへ視線を向けて、ヒアリングし、頭をひねってプロダクトへの落とし込みを考えた“渋谷ビル”。メンバーみんなが、街・人・モノ・コトに丁寧に触れて、当社ができる最大限を追求しています。次回は、街からもらったヒント(ニーズ)をいかに汲み取り、当社ならではのこだわりを築いたのか、紹介させていただきます。