エントランス
2024.11.19
Project Story
Project Story 03|関電不動産京都ビル
JR京都駅から徒歩3分。ビジネスと観光の中心に位置する最高のロケーションと、1フロア600坪以上の大規模オフィスビルとして、ひときわ目を引く存在感を放っている関電不動産京都ビル。1981年に竣工したこのビルには質の高い素材が惜しみなく使われ、重厚感ある雰囲気や耐震性に優れた構造などから、大手の銀行や保険会社など様々な業種のお客さまに多数入居いただいています。
待ち合わせ
01.
Project|築古ビル再生計画
新旧織り交ぜたエントランスづくり(リニューアル)によるオフィスの価値創造
JR京都駅の大規模改修や京都中央郵便局の高層複合ビルへの建て替えなど、京都駅周辺で再開発ラッシュが加速するなか、ビルとしての競争力をさらに高めようとスタートした関電不動産京都ビルのリニューアル。ビル自体の再開発は難しいという状況のなかで、どのようにプロジェクトを進めていったのか。“DELIGHT(ワークスタイルに輝きと喜びを)”というコンセプトを掲げてオフィスづくりを進める当社開発メンバーがリニューアルにかける想いを語ります。
開発事業本部
第二事業部 開発グループ
川上 祥季
開発事業本部
第二事業部 運用第一グループ
大森 香菜
02.
Concept|歴史を受け継ぎ、長期運用を見据えたオフィスビルへ
―― 今回はエントランスのみのリニューアルですが、そうなった経緯について教えてください。
関電不動産京都ビルは築約40年を迎える中、周辺では京都中央郵便局の高層複合ビルへの建て替え計画等が進み、当ビルでは競争力強化の必要性が問われる状況にありました。競争力強化のための対策として、当時新型コロナウイルスの影響で長期的に空室となっていた区画の一部をシェアオフィスやリフレッシュスペース等へリニューアルすべく検討を推進しておりましたが、検討の最中で、事務所ニーズが回復してきたことから、最終的にそれらの案は見送られることとなりました。
そこで、代案として着目されたのがエントランスでした。新たな付加価値を創造できる広々としたスペースがあったことと、公開空地ではなかったことから、思い切って内装だけでなく外構を含めた全体をリニューアルすることになりました。
―― リニューアルにあたっては、どのようなコンセプトを掲げられたのでしょうか。
最大のポイントは、長期運用の可能性を見据えた点です。この先、周辺のビルが再開発で新しくなっていったとしても、競争力を維持しつつ、経年が魅力として評価されるビルにしていくことが今回の大きなミッションでした。また、このビルは関西電力の土地に建てられており、隣には関西電力の京都支社(関電ビル)があります。私たちも関西電力グループの一員として、この土地とともに歩んできた歴史と伝統を受け継ぎ、新たな時代へつないでいくことをコンセプトの一つとして大切にしています。
03.
Hard|目指したのは、新旧の融和
―― 長期運用を見据えたビルというコンセプトがどのようにものづくりに反映されているのでしょうか。また、既存ビルの改修ということで苦労された点についても教えてください。
関電不動産京都ビルはもともと長期的な視点で建てられており、堅固なブロックやトラバーチンなどの上質な建築用材が贅沢に使われています。そうした部分は継続して活用しながら、リニューアルで改装した部分でも新旧がうまく融合するように意識しました。
【1】エントランスの天井
エントランスの空間や天井の設えはモダンなヨーロッパ建築をイメージし、街並みとの美しい調和を図っています。隣接の関電ビルは「関西建築界の父」と言われる建築家・武田吾一さんが半世紀前に設計したもので、そこからも少しインスピレーションをいただいております。歴史的な建築物のように、年月が経っていくほどに味が出て、価値が高まるビルを目指しています。
ここもPOINT
しっかりとした造りで重厚感ある雰囲気を醸し出している天井の梁ですが、実は細かい装飾部分は木材のほかにウレタンを使用し、できる限りの軽量化を図っています。地震が多発する昨今、天井を軽量化することで耐震性や安全性をさらに確保することができました。
エントランス
【2】内壁のデザイン
エントランスの一部が店舗の入口となっており、その部分はガラス面になっていました。美観のため壁で埋めることになりましたが、新しく設置した壁と昔から設置されていた壁が並ぶと、どうしても違和感が出てしまうのが課題でした。そこで、その違いをあえてデザインとして見せるという発想に方向転換。もともとの大理石と並べたときに、一番美しく見える素材はどれか。照明の色味や光の当たり方なども考慮しながら、実際に私たち自身で吟味しました。壁面の一部にはカラーガラスを採用しており、この部分に改修のコンセプトや想いなどを表現したパネルを展示することで、今まで以上にお客さまに愛着を持っていただけたらと考えています。
コンセプトパネル
【3】外壁を彩る光の演出
古きよき建材として活用している外壁ですが、堅固ではあるものの若干の古さが残ってしまうことが気になっていました。そんなとき設計会社さんから外壁に木の影を投影する光の演出をご提案をいただきました。投影された木の影が風で揺れることで、上品で華やかな印象を与えます。
ファサード
04.
Soft|生産性を高め、リフレッシュもできる働く空間
――ワーカーの皆さまに喜んでもらえるように工夫したポイントを教えてください。
リニューアルにあたっては、入居されているお客さまのお声も反映させています。その一つがWEB会議室です。お客さまとの日常的なコミュニケーションの中で「働き方の変化に伴い、WEB会議の機会が増えたものの、執務室内にWEB会議ができる空間がなく困っている」といったお声をいただいておりました。そこで、エントランスの中にWEB会議室を設けることを決定。企画検討時、エントランス空間の中に違和感なくWEB会議室を組み込むことへの課題があり、コンペの要件にも入れさせていただいたところ、 WEB会議室をエントランスの柱のように見せる提案をいただき採用しました。一目ではWEB会議室とは気づかないくらいに、見事に空間と調和するデザインとなりました。
テレキューブサービス社が運営するWEB会議室でどなたでもご利用いただけます。お客さまはもちろん、来客の方々にもご満足いただける施設になると期待しています。
――環境面で注力したことはありますか。
お客さまの働く環境づくりという観点においては、リラックスするスペースが少なかったため、今回のリニューアルにより外構部分をリフレッシュスペースとしてお楽しみいただけるように改修しました。もともと外構のグリーンは一部しかなかったのですが植栽の面積をぐっと増やし、自然光やグリーンを感じられる都会のオアシスになっています。
また、環境への意識を高めるために、すべての植栽にネームプレートを設置しています。植物の名前だけでなく、QRコードを読み取ると分類や特徴などのより詳しい情報を知ることができ、実物と比較して楽しんでいただけます。
ここもPOINT
実は、リフレッシュスペースのベンチにも工夫があります。一見すると普通のベンチに見えますが、BCP対策として「かまどベンチ」を採用しました。座面の中にはかまどの材料が収納されており、災害時には炊き出しが可能です。平常時も緊急時も、ここが皆さまの憩いの場となることを願っています。
――最後に、これからどんなパートナー様にご入居いただきたいか教えてください。
開発にあたっては、お客さまとの実際のコミュニケーションを重視し、設計会社が提案した案をそのまま採用するのではなく、自分たちの考えやこれまでにお客さまからいただいたご意見を積極的に反映しています。たとえば、床材一つとっても、多くの種類から最も滑りにくいものを選定するなど、すべてにこだわりを持って取り組みました。WEB会議室を設置していると感じさせない柱型や重厚感あるレトロモダンな天井デザインは、個人的にも気に入っているポイントです。エントランスを企業の第一印象を決める重要な要素としてお考えの方には、ぜひご注目いただきたいと思います。
京都駅周辺は再開発や大学の開校などで盛り上がりをみせていますが、新しく変わりゆくエリアの中で長期運用を見据えたオフィスを目指す関電不動産京都ビルだからこそ光るものがあるのではないかと考えています。そこを魅力に感じていただける企業に見つけてもらいたいですね。また、新築物件の場合は賃料が高額になることが多いのですが、もう少し手ごろな価格で検討したいと思う企業や、京都という土地柄を気に入ってくださる企業に、オフィス移転の際の選択肢としてご検討いただけるとうれしいですね。
EDITOR’S NOTE
スクラップ&ビルドの時代を経て、持続可能性やゼロカーボンが見直されている今。長期運用を見据えた関電不動産京都ビルは、そのコンセプト自体がサステナブルであると考えます。古きよき伝統と文化を守り続ける京都という土地柄との親和性も高く、この場所だからこそ生まれるクリエイティビティや可能性を大切にしたい。時代の変化と共に時を刻むビルとして、既存のお客さまとのコミュニケーションを大切にしながら更なる価値向上を目指し、新たに京都のこの地でビジネスを展開する企業の方々に選んでいただけるオフィスビルとなるよう、私たちも日々研鑽してまいります。