2025.07.00

Project Story

関電不動産茅場町ビルプロジェクト

東京・茅場町に2025年10月に竣工予定の関電不動産茅場町ビル。首都圏では初のコンパクトオフィスで、シェアラウンジやルーフテラスなど充実した共用設備をはじめ、ゼロカーボンを目指した省エネ性能、多彩なパターンから選べるセットアッププランなど、さまざまな工夫が施されています。このプロジェクトに携わった、髙田拓さん、小早川あずささんに、開発ストーリーを聞きました。

髙田 拓さん
  • 首都圏事業本部 ビル事業部
    建築技術G グループ長
  • 髙田 拓さん
小早川 あずささん
  • 首都圏事業本部 ビル事業部
    事業推進第二G リーダー
  • 小早川 あずささん

Background

事業領域拡大の方向性とマーケットニーズが合致

―― 関電不動産茅場町ビル開発のきっかけを教えてください。

髙田 首都圏のビル事業において、当社は200~300坪といった中規模物件の新築開発を得意としていますが、小規模物件については運用での実績はあるものの、開発は手掛けていませんでした。
一方で、世の中の動向に目を向けると、ベンチャーやスタートアップ企業、また支社として首都圏にオフィスを構える際、ESや採用の観点から、小規模であってもオフィス空間を非常に重要視するといった傾向が見られました。
当社としては首都圏での事業領域拡大に向け、コンパクトオフィスの開発を考えていたなか、世間の動きとしても、小規模事業所が重要視されていた。この2つの背景が合致し、今回のチャレンジにつながりました。

―― 開発に当たり、茅場町を選んだ理由、また地域の特性について教えてください。

髙田 首都圏事業本部がある東京都中央区はオフィスラインナップを強化したい主要投資エリアであること、大企業が集積している日本橋や京橋といった中心地に近く、コンパクトオフィスを展開するのに茅場町は良い立地であると捉えています。
街の特徴としては、東京駅から徒歩圏内でありながら昔ながらの雰囲気も残っており、飲食店なども充実しているエリアです。一度入るとその良さがわかるようで、もともとこの地に拠点を置く企業は、移転の際にはまずこのエリア内を検討される傾向が出ています。こうした環境下で、新たにチャレンジされる企業の背中を後押しできる物件にしたいと考えています。

Point

ポイントは、環境への配慮とコミュニケーションの活性化

―― ターゲットはどのような層を想定されていますか。またビル開発にあたりこだわったポイントも教えてください。

髙田 第一のターゲットは、従業員数20~30人のベンチャーやスタートアップ企業です。成長過程にあり、シェアオフィスを出て自社のオフィスを構えたいと考えられているような層を想定しています。また首都圏以外に本社がある企業で、東京進出を考えている企業もターゲットになると考えています。
こだわったポイントは環境面です。一つは関西電力グループとして、ゼロカーボン社会実現を目指すうえでの省エネ性能。外皮性能の向上で断熱性を高め、空調設備の省力化を実現しました。その結果、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)において最高ランクの評価を受け、ZEB Ready(ゼブレディ)の認証も取得しています。
また各階の軒天には東京都多摩地域で生育した木材を使用しています。これは東京都が進める国産木材の普及と需要拡大の取り組みを活用したもので、環境に優しい「地産地消」の考えも取り入れています。

1階 LOUNGE

小早川 施設・設備面で力を入れたポイントは、コミュニケーションです。ターゲットとしている成長中のベンチャーやスタートアップ企業の多くでは、急激な社員の増加によるコミュニケーションの難しさが課題となっています。そこで、「“つながり”に味方する」というコンセプトを掲げ、さまざまな施設を用意しました。
まず1階をすべて共用部にし、ラウンジ、貸し会議室、マルチブースなどを設けています。ラウンジはランチや個人作業のほか、全社会議や懇親会、スポーツ観戦など多目的に利用できるように設計しています。一方で、1階の共用トイレ「Restroom+」にはちょっとしたソファーを置くなど、一人でリフレッシュできる空間も備えています。また屋上には、開放的な空間でカジュアルにコミュニケーションが取れる、ルーフテラスも備えています。

―― オフィスフロアで導入されている、セットアッププランの内容を教えてください。

1階 会議室

小早川 オフィスフロアには、従来の物件のように自由にレイアウトを組んでいただけるスタンダードプランに加え、什器などもこちらで用意するセットアッププランがあります。セットアッププランは、お客さまの移転にかかる費用や時間などの負担を抑えるために企画していますが、お客さまの要望とは違う個所がでてくるという課題もあります。そこで今回は、執務スペースの什器まですべて用意するフルセットアップと、会議室などの間仕切りや什器のみを用意するハーフセットアップの二つの規格を用意しています。そのなかにも、いくつかのバリエーションがありますので、意思決定にかかる負担を軽減しつつ、お客さまの希望に合った仕様を選んでいただけると考えています。

Knowledge

さまざまな苦労から得た、今後に役立つ知見

―― プロジェクトを進めるにあたり、苦労したのはどんなところでしょうか?

髙田 コスト面です。着工時の建築費が、取得時に目算していたものから高騰し、どう折り合いをつけるかは非常に苦労しました。当社の思いを全てやり切ろうとするとなかなか難しかったので、取捨選択にかなり悩みました。そんななか優先的に採用したのが、建物の省エネ性能です。これは方法も工夫しながら、当初の目標を維持するように努めました。またコストを抑えながらも、グレードを維持するため細部まで配慮しています。

小早川 リーシングに関してもコスト面での苦労がありました。大規模物件と比較して広告予算に制限があるなか、お客さまにどのように情報を届け、認知を高めていくかは非常に頭を悩ませました。ただ問い合わせを分析するなかで、近隣からの問い合わせが多いことに気づきました。そこで、工事の仮囲いに広告を表示したり、周辺にチラシを配布したりといったアプローチを展開しています。
一方で、東京駅に近い立地ということで、東京へ支社開設を検討されている地方企業への訴求としては、大阪本店の開発事業本部にも協力してもらい、在阪企業へのアプローチを進めています。

―― 今回のプロジェクトを経験し、得られた点について教えてください。

小早川 商品を企画するにあたり、他社が開発されたオフィスもいろいろと見学させていただきました。そのなかで、今まで自分が知らなかったオフィスの新しい機能や他社の考え方に触れ、それを踏まえて当社はどう考えるかといったところが、自分の中で固まってきたように思います。当社のオフィスビルは、毎回その土地にあったビルを一から設計するところが強みです。今後さまざまな場所で、さまざまなサイズの物件を開発していくにあたり、役立つ知見が得られたことは大きかったですし、自分自身も成長できた点だと思っています。

入居されたお客さまと、共に育てるオフィス

―― 入居を検討されているお客さまへのメッセージと、今後の展望をお聞かせください。

小早川 どの物件にも言えることですが、この物件は特にテナントとして入っていただくお客さまにお使いいただくことで、ビルの魅力が引き出される物件だと考えています。特に共用部は使っていただかなければ単なる空間としてあるのみになってしまいます。ご意見があればすぐに運用にフィードバックしながら、お客さまと当社が一緒になって、茅場町という土地に馴染む物件にしていければと思っています。

髙田 今回のプロジェクトは、設計や現場のメンバー合わせ20人ほどのチームで、まさにこのビルに入居していただくようなお客さまと同じ規模感で動かしてきました。われわれも、20人でうまくプロジェクトを進めるにはどうすべきかを考え、日々改善を重ねながら、ものづくりに反映しています。本当に丁寧にメンバーひとりひとりの想いを積み重ねてきたプロジェクトなので、こうした想いが、ご入居いただくお客さまのチームづくりを後押しできれば嬉しいですね。

関電不動産茅場町ビル

https://office-kanden-rd.com/office/849/
東京駅から徒歩圏内でありながら、昔ながらの雰囲気も残す茅場町。このユニークな立地に「”つながり”に味方する」をコンセプトに、多様なつながりでチームビルディングを後押しするオフィスが誕生しました。
働く人や来館者を温かく迎えてくれる木調のファサードのなかには、シェアラウンジ、ルーフテラス、オールジェンダートイレなどの共用設備が充実。「ZEB Ready」認証の取得や外装の一部に東京・多摩地区産の木材を使用するなど環境にも配慮しています。